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携帯が鳴る音がする、まだ目蓋は重い、無視を決めて布団に潜り込む。
一定時間で鳴り止むと思っていた音は鳴り止まない、電話の音だと思い出す。

こんな朝っぱらに誰だと思いながら起き上がる、カーテンの向こうは既にとても明るい。
近くにあった携帯を取って、通話ボタンを押しつつ耳元に持っていく。


「だれ」


短く問いかける、口の中が乾いている。
何となく不快な目覚めだった。

『涼くんでーす、おやつの時間ですよー』

曖昧に返事をしながら、タオルケットの中に再び潜る。
おやつの時間、頭が回らない、まだ寝れると何となく思った。

事実、まだ目蓋は重い。
朝でも昼でも何でも良いからまだ寝られるともう一度寝る体勢に入る。

『んー、じゃねーよ』

何か言ってると思う、目蓋が完全に閉じて視界は黒で埋まる。
丁度良い温度だった、ぼんやりした意識に変わる。

『おいこら、寝んな馬鹿』

睡眠を邪魔されそうでそのまま切った、音があると眠れない。
休日は寝る為にあると、どっかの誰かが言っていなくてもいいから寝たいと願う。
最近はよく眠れてなかった所為もあるかもしれない、うとうとする頭で考えてもおぼつかないまま沈む。


手の中の携帯がまた鳴る、無視して少し遠くに放り出した、ぼふと鈍い落下音。
それでも途切れることおく音はなり続ける、うるさい。

仕方なく電話を手探りで探し当てて、また耳に当てる。

「んだよ」
『そりゃこっちの台詞ー』

また切って良いだろうかと、携帯を耳元から離して電源ボタンに指を置く。
すぐにまた同じように電話がかかってくることが容易に想像出来てやめた。


そうしているうちに目が覚めて来る、二度寝は諦めなければならないだろう。

もう一度携帯を耳に当てて立ち上がる。
とりあえず冷蔵庫へ向かった、喉が変に渇いていた。
冷蔵庫を開けてドリンクポケットにあるペットボトルを一つ取り出す。


『つーか、お前の所為で用件忘れたじゃねーか』


用件があって電話したのかとそこで初めて知る、ただの暇つぶしかと誤解していた。
でも忘れたことに関しては俺の所為ではないと思ったが、反論するよりも前に喉の乾きを消したい。

ペットボトルの口を開けて口の中に流し込む。
冷えた水が喉を通る、やっと口の中にあった変な乾きが消えた。

もう二口ほど口につける、電話の向こうから呼掛ける声がした。

「全然、俺の所為じゃないだろそれ」
『寝ぼけて電話切られなきゃ忘れてねーよ』

何でも無かったように反論すれば何でも無いように返事が返った。
別に寝ぼけていたわけでもなかったけれど、言わないことにした。
その方が楽だと知っているし、責められるのは目に見えている。

『つーことで、切るわ』

声の後すぐに切られた携帯をポケットの中にいれる。
もう一度ペットボトルの中の水を口に含んだ。

習慣というよりは癖からの行動だった。
いつついたものなのかももう覚えていないほど昔からの癖。

「あ、」

机の上に放ったままの依頼の紙、たった一枚で机の上に無造作に。
無くさないようにしないといけないと思っているのに、また適当に置いたのかとぼんやり思う。

そういえば、とふと思う、横峰の行動を聞かないといけなかったと思い出した。
情報料を取られるのは嫌だけれどわからないままで動いても、政治家になんてそう会えない。


「……」


携帯を取り出す、机の上にペットボトルを置いて少しそれを見ながら迷った。
涼に頼むしかないとは知っている、けれどやはり憂鬱になる。
アドレス帳で涼の名前を探した、番号を選択して通話ボタンを押す。

「りょ、」
『どしたよー、さてはオレが恋しくなったりしたー? あー、あれだな、声だけでもとか? おまえ、』

繋がったと思った瞬間に切りたいと思った。
むしろ会話したくない、無意識に携帯を耳から離す。

まだ何か言ってるようだけれど聞く気になれない。
やっと声が収まったように思う、再度携帯を耳元へ。


『海はむっつりー』


いきなり何だと電源ボタンに指をかけかける。
恐らく聞いていないことに気づいて勝手に言っているのだとは思う。

けれど、しっかり聞き取った耳。
どうして俺がむっつりなんだとまず思った。
関わるのも気が引けたけれど、反論しなければ絶対に後でからかわれるかと息を吐き出した。

「誰がだよ」
『お前に決まってんだろ』
「違うから!」

またまたー、と何処かで聞くような台詞を言ってからかわれる。
本気で通話を切断したくなった、返答に疲れて口を閉じる。

また携帯から聞こえる声が喋り出す、俺に用件を言わせない気なのかとイライラしてきた。
無理矢理にでもこれは話を切り出すべきだと決心して、声を遮る。

「情報欲しいだけだから」
『そんなに恥ずかしがらなくてもー』
「恥ずかしがってねぇよ!」

どこをどう取ればそうなるんだ、そう返せば向こうから笑ったような声が返る。
相手をしない方がいいかと思って、机のペットポトルを冷蔵庫へ戻す為に持ち上げる。

冷蔵庫の手前まで歩く。
その間ずっと相手は笑っている。
いい加減笑い過ぎだと思った。


『あんな、欲しいなら直接ウチに来いってー。丁度良いし』


またかと億劫になる、寝溜めしたいなと思いつつも別のことが浮かぶ。
最後の言葉は小さくてよく聞き取れなかったが、特に気には止めないまま断りの言葉を考える。

『つか、絶対来いよ、強制、拒否すんなよ』
「いや、遠慮します」

早口で言う言葉に否定を返した、相手が低く少しだけ唸る。

またあの気まずさを味わうことが嫌だった。
後でとても申し訳なくなることが嫌いだった。

それに行くことも正直面倒なのだ。
そう思ってしまうと、この連休全て家で寝ていたい気分になる。


しばらく向こう側が沈黙した。
認めてくれるのだろうかとありえない期待を浮かべる。
無いだろうなと打ち消して向こうの答えを待った、ふと嫌な選択が浮かぶ。

『あー、最近不況だしなー、お値段どーしよーかなー、ちょっとあげ、』
「行く行く行きます!」

勿体ぶったような声に、紙を机に叩き付けて遮った。
わざとらしい声色、不況なんて関係無いくせにと心の中で静かに愚痴る。


足下を見られるこっちも悪いとは自分でも思っている。
不定期の収入でやっていけていることが不思議な、今の生活。
切羽詰まることが少ないとは言えど、貯金がほとんど無い状態を続けることは不安だった。

『別に無理して来ねーでも、』
「無理してないしてない、むしろ暇です大丈夫です」

二倍三倍であればまだ可愛いものだ、と思い出す。
楽しそうに七倍な、とか言われた時は何も考えられなくなった。
一番は何よりも普通の値段で売ってくれることだけれど、何かで怒らせない限りは大丈夫だろう。


一度妥当な価格にしてもらえるよう交渉してみようかと思う。
向こうも商売だし譲らないかもしれないけれどと、期待は今のうちに薄めておく。

期待し過ぎると、上手くいかなかった時の落胆が大きいと知っている。
駄目もとで行くような気分にしておいた方がいいだろうと、髪をぐしゃりと掴んだ。


それにしても、利益が無いと駄目なことはちゃんとわかっているが、辛いなと思う。
生活費には前回の依頼分でも何とかいけそうでも、刀をそろそろ買い変えたくもあった。
いっそ普通のバイトでも探そうかと投げやりに案を出すけれど、中学生を雇ってくれる場所なんてない。


『待ってるかんな』


ぐるぐる考えていると、ピ、と無機質な音が鳴った、相手のいなくなった通話。
無意識にため息をつく、風呂場にあるハンガーにかけたままの服を適当に取った。
めんどくせ、小さくぼやいた所で誰も返事はしなかった。

寝間着を脱いで取った服に着替える。
財布と携帯をポケットの中へ入れた。


外に出ると眩しくて目がずきりと一瞬痛む。
日の光から逃げるように振り返って鍵を閉める。

ちゃんと扉が閉まってるかどうか確認して、階段へと歩いた。



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「……」

十分ほど歩いてついたマンション。
それを見上げる、此処まで時間を空けずに通うことは久しぶりだった。

「……」

目の前のインターホンを押す、昨日聞いた音と同じ音がなると思っていた。
けれど予想を裏切って根本的に違う音が鳴る、着メロ風になってませんかと自問した。


絶対聞き間違いだ聞き間違いに違いないだって昨日までは普通に、そこまで考えて止まる。
誰かの携帯の音か何かでそう聞こえたんだと納得する、そうとしか思えない。
今までの音が聞こえなかったのは、きっと俺が押せてなかったからか何かだと結論づけた。

けれどもう一度押して確かめる気にはなれない。
きっとそうなんだと決めつけて、終わる。


「なーに百面相してんだよ」


声で存在に気づいた。
またこの前と一緒で、涼がいつの間にか玄関の扉を開けていた。

俯いていた顔を上げれば目が合う。
その際、一瞬だけ何故か涼の眉が寄ったように見えたが、特には気にならない。


それよりも気になっていたのは、やはりインターホンの音。
涼が出て来たということはインターホンは鳴ったということだろう。

そう思うとまた疑問が浮かぶ。
じゃああの着メロ風の音楽なんなんだ。
やっぱりインターホンの音がそうなったんだろうか。

考えるうちに、段々とこんがらがり始めた頭。
聞いた方が早い、そう結論を出して、ごちゃごちゃした思考を捨てた。

「インターホンの音、」

それだけ言った所で涼は、あー、と声を出す。
これ以上は言わなくてももう良いだろうと続けようとした口を閉じた。

「ちょっといじって変えた」

やっぱり変わってたんだと知った。
その反対でいじって出来るものなのかと考える頭。


同時に、此処は借りている場所なんじゃないんだろうかとも思う。
そうだったら大家さんへの説明だとかはどうしたのかなど、他の疑問が浮かびかける。

けれどそれを頭を振って、もう一度頭をリセット。
俺には関係の無いことなんだからいい、と打ち切った。


「…何だよ」


どうしてか目が合ってからずっと笑顔で見られている気がする。

若干口端が引きつったような笑顔。
ずっとそれで見られるのは何となく不気味で、嫌な予感がした。

「これ誰につけられたよ、てめー」

言っている意味が全くわからない、シールでもついてるんだろうか。
服の後ろをたぐり寄せてみようとする前に、首筋を涼の指が叩く。
僅かにくすぐったいのを堪えて、何だよ、と聞けば、涼の表情が不快そうなものに変わった。


「キスマーク」


何だそれで埋まった思考、何だそれ。

「覚えがねーわけじゃないだろ」

改めて言われた意味を考える。
キスマーク、恐らく手前までの涼の行動から首にある。

何であるんだと自問した。
最近の行動を振り返っても、誰かにつけられた覚えは全く、


「あーっ!」


一気に顔に熱が集まった。
うっせーな、そう言った涼の注意の声を無視。


昨日、影と会ったことを思い出した。
恐らく首のこれはあの時のと思い出した。
何故忘れていたのかもわからない強烈な記憶。

てっきり夢か何かだと今まで思っていたのに、と頭が呟く。
それ以前に覚えてもいなかったということは、忘れていく。


昨日の夜に零れた水は拭かれていた。
意識して見たわけではないけれど、濡れてはいなかった。
完全に部屋は元通りで、いつも通りで、全く気づかなかった。


そういえば、と唯一の元通りでないものを思い出す。
依頼の紙が、朝には机の上にあったことが唯一の違い。

俺はベッドで見て、そのまま寝た。
ベットにあって当然のものなのに。

恐らく、影が机まで持って行ったというよりは見てそのまま、と考える方が自然だろう。
それに気づいた瞬間落ち込んだ、もう少しちゃんと管理することを決意する。


無意識に首にいった手で思い出す。
あの時舐められたのは、これかと思った。

涼の指が叩いた位置だったとすれば、服で隠れてない。
なんてことしてくれたんだと、本当に静かにため息をつく。


何が目的か全くわからない、影って何なんだ。
そこまで考えて、涼が訝し気にこっちを見ていることに気づいて、やめた。


「何でも無いから、気にするな、気にするなよ!」


それだけ返す。
文句がありそうな顔で見られるけれど、目線を逸らして回避。
無理矢理に話を切り出そうと判断、視線を外したまま口を開く。

「海?」
「あ、え?」

ふと聞こえた声に言おうとしたことを忘れた。

声の方を見てみると、記憶が正しければ柊、長髪の方がいた。
頭だけ出してこっちを見ている、俺と目が合うと部屋から出て来た。

「海も遊びに来たの?」
「うん?」

も、ということは柊は遊びに来ていたんだろうと推測する。
涼の家は、同級生がよく遊びに来ているらしいことを聞くから、驚くこともない。


ただ、他の人がいるなら来ない方が良かったなと後悔が浮かぶ。
同級生の前で、依頼のことを堂々と話すわけにもいかない。

それなのにどうして俺を呼んだのか。
そんな疑問で涼を見るが、涼は少し無表情気味にいるだけ。


涼の意図がわからないと思った。

「早く入って来なよ」
「はい?」

すっかり遊びに来たと思われている、どうしようと迷った。
用事もなく来るのはおかしいだろう、かといって理由も浮かばない。
とりあえず入らないことを伝えるべきだろうと思いつく。


「拓巳もいるしさ」
「んぇ?」


言葉が不意で声が裏返る。
大丈夫だきっと聞かれていないきっと、そう信じる。
一瞬のことだし、一瞬だし、大丈夫、熱くなる顔。


拓巳もいるなら転校生2人ともが来てるということ。
本気で俺は此処に来て良かったんだろうかと今更に迷う。

無理矢理思考を変えてそっちに専念。
よくあることよくあること、念じながら二人へ意識を戻した。


なのに前の2人は笑っている。
やっぱり聞かれていたのかと、顔はより温度を上げた。

柊は顔を背けているけれど、残念ながら肩が震えていて笑っているのはわかる。
ただ涼の方は隠そうともしないで、腹を抱えて大きく笑っている辺り凄くむかつく。
もう今後あんな声を出さないように、気を張ろうと決心した。


それにしても二人は笑い過ぎだ。

「ごめんごめん」
「別に、いい」

やっと柊が笑いを収めて俺に謝る。
僅かに目尻に涙、そこまで笑えたのかとまた恥ずかしくなる。

自分の所為だし仕方ないという意味で出した声が、予想以上にぶっきらぼうになった。
不意に頭に重み、下に押される。

「すねんなってー」
「すねてないっ、重い!」

押してくる手を外そうとする。
けれどその間にまた押されて、後ろに倒れかけた。

その前になんとか手を離してもらえて、玄関の扉に掴まって何とか転けずに済んだ。
涼を睨むが視線は何処か別の所を向いていた、いつか仕返ししてやると心に刻み込んだ。


「ほら、早く行こう」


伸びた手が扉に掴まっていた俺の手を掴む、見上げると柊と目が合う、柊が笑った。
何故だかそのことが気恥ずかしく感じて目を逸らす、少しだけ顔が熱くなった気がした。

左手で掴まれた手を見る、聞き手の右手はどうしたんだろうと思って探す。
探したことを後悔、集まっていた熱が霧散した気がした。

「あ…、おう」

引っ張られるままに適当に靴を脱げば、整える暇も無しに柊に引っ張られた。

軽く腹に右手を埋められていた涼を見る。
それほど酷くはなさそうだけれど、表情が痛そうだった、どんまい。

どうしてそうなったのかは、いまいちわからない。
けれど柊は怒らせないようにした方がいいだろうなと思えた。


テレビのあるリビングまで進む、拓巳が座って何かを見ていた。
近寄って覗き込む、今月発売の雑誌、後で読ませてもらおうとぼんやり考える。

「海。…おはよう?」

戸惑いながらの挨拶、どう返せばいいのか迷う。
おはようの時間ではないと思うが、こんにちはというのもおかしい。
だから他の、何かそれに変わる言葉を探す、けれど何も出て来ない。

「おはよう」

結局拓巳の言葉を同じように返した、どっちでもいいかと思った。
少し話題が途切れる、何か話すこと無いかと思って探す。


「海も来たし、どっか行く?」


唐突の柊の提案、拓巳がそれに賛同する。
俺が此処に来た意味ってあったんだろうかとぼんやり思う。
いや俺の目的は情報だったはずで遊びに来たんじゃない、自分に思い出させる。

柊と拓巳が話している間を抜けて後ろにいた涼の隣まで寄る。

「涼、」
「ん?」

涼はただ同じ視点のまま返す、俺も涼から視線を外した。
情報、と小声で言う、あー、と気の抜けた返事。

「何の、ってもわかってるけど」

わかっているのなら言わなくても良いかと口を閉じる。

目の前の二人の、ほとんど柊の、声だけが部屋に響く。
横目で涼をうかがえばさっきと同じようにいる、相手を言うべきなのかと考える。

「横峰の、」
「今日午後10時半以降は事務所から自家用車で帰宅予定。
 自家用車で帰る時は、必ず一度黒町で降りる、後は行方知れず。
 そん時に裏路地で、知られたくねー取引ってのが妥当だろうよ。
 んで、明日は午前9時から午後10時頃まで会議、それ以降は自由。
 明後日以降になると、業務終了後は直帰予定、美人秘書の送迎付き。
 あーもー、羨ましーよな!」

最後だけ大きめな声で言われたけれど、正直そう言われても困る。

それよりも一気にずらずら言われても覚えきれなかった
しかも自分の言葉を切られてからいきなりは余計に。


むしろ覚えてることが凄いと思う。
今思うと電話の時にはもう調べてたんじゃ、と憶測を立てる。

どうせ今考えたところで、意味は無いのだろう、考えないことにした。


「何が羨ましいの?」
「ぎわあっ!」


いきなり背後から声がした、驚いて肩が跳ねる。
全速力で涼の後ろに走った。

そこから改めて自分の居た位置へ視線を向けると、きょとんとした表情の柊と目が合う。
柊にしてみれば無意識だったとは思うけれど、背後に立たれることは苦手だった。

「二人だけの秘密ー」
「へえ、気になるなぁ」

涼が上手く誤摩化した。
涼の後ろに隠れて良かったと感じた。

柊を見れば、涼に向いていた視線がこっちへ落ちる。


「ねえ海?」


笑顔が怖い笑顔が怖い笑顔が怖い、それしか頭に浮かばない。
すいません、小さく謝れば、何か謝ることでもしたの、そんないい笑顔で揚げ足を取られた。

どう答えていいのかわからなくなる。
怒ってるわけじゃないよとまた笑顔、今度のは怖くないと安心。


漠然と長谷に近いと感じた、こんなに黒い人だったっけと最初の頃を思い出す。
何となく初めは、今の笑顔引く怖い、だった気がした。

気のせいだったんだろうか。


「とりあえず出ない、か?」


いつの間にか玄関にいた拓巳の声。
結局出かけることになったらしい。


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