01 - 02 - 03 - 04
酷い虐待暴力表現があります。
苦手な方はそのまま 04 へお進み下さい。


「つ…げほッ……っ!」

お腹を思いっきり蹴られる。
近くの壁に背中が当たって、痛い。


「———」


父さんが何か言う。
でも、痛くて、耳鳴りがして、聞こえなかった。

「づぁっ!」
「声、抑えろ。うっせぇな」
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめ、な…ぁっ、」

首に手が来て、ああ、目、閉じないといけない。
目を見られたら、すぐ済まなくなる。

足が浮く。
苦しい。


「…っぁ…、」
「お前なんかいらねえのにな」
「……っ!」


いらない、いらないのかな、俺。

苦しくて、目が開いて、見えた、怖い顔をした、父さんの、
青い、目。

俺と同じ、色。


「見んじゃねえよッ!」
「ぅが…ッ!!」


壁に、思いっきり突き飛ばされた。
背中がジンジンして、頭も後ろに思い切り当たってガンガンして、痛い、気持ち悪い。
また目を見せないように、下を向く。

「分からせて楽しいかよ!?」
「ご、めんなさいごめんなさいごめんなさいッ!」

伸びた髪を引っ張られる。
怖くて、耳がキンキンするほど父さんは、大きな声で言う。



「なんでお前まで、んな目してんだよ!
 んなに馬鹿にしてえのかよ、なあ!?
 …いっそのこと、それ抉ってやろうか」



左目に向かって、父さんの指が近づいて来る。
抉られる、それって痛いと思う、それに、見えなくなる。

怖い。
咄嗟に両手で目を覆った。


「防ぐんじゃねえ」


バシ、ってパーで叩かれて、ほっぺたが痛かった。
殴られたんじゃないから、まだ、マシだけど、やっぱり痛いものは痛かった。


「抉られるのは嫌か、化けもんが」
「がはっ…っ!」


またお腹を蹴られる。

喉が、気持ち悪い、吐きそう、ひりひりする、でも、吐きたくない。
首の所の服を持ち上げられて、思いっきり、またパーでほっぺを叩かれて。
口の中も、痛くなった、何か変な味がする。

化け物なんかじゃない、と思った。
だって俺は、ただ目が青いだけなのに。
目が青い人はテレビで時々見るし。

それに、言った父さんだって、同じ色してるくせに!


「…そんなの、父さん…だって…」


ギ、って父さんから小さく歯の鳴る音がした。
目を開けて、父さんを見た。
凄く、怒ってる顔。

でも俺だって、言いたいこと、ある。
怒らせたくないけど、でも、それでも。



「あんただって、母さんが死んでもなんも思わない化けもんだ!」
「…もっと殴られたいか」



さっきより低くなった父さんの声。
いけないこと、言っちゃったのかな。

でも母さんのこと、父さんは、全然、何も言ってないよ。
俺の居る所で泣くとか、そういうことは想像出来ないけど、でも。


「葬式の時、お前の前でも言ったはずだろ。
 咲のことは大変残念だったと思います、とても悲しく思います、って」
「うそだ!!」


こういうのは、強がり、っていうのとは違うと、思う。
よくわかんないけど、けど、でも。

だって、父さん、笑ってるんだ。
凄くいつもと一緒で、一番嫌いな笑い方で、笑ってる。

だからちがうとおもう。

首の所が苦しくて、足が浮く感じがする。
父さんを見たら、父さんの顔はすごくこわ い。

あしがふるえる、からだぜんぶこおったみたいにうごかない。
ああいいすぎた、どうしておれはあんなこといっちゃったんだろう。
あんなこといっちゃいけなかったんだ。
いっちゃいけないことをおれがいったから!
だからとうさんはおこる。

こわい。

思いっきり投げられた体が壁に当たる。
ドンって凄く強く。

喉がまたひりひり。
頭がまたぐわんぐわん。


「気は済んだな、海ちゃんよ?」


父さんが言って。
まだ、わらってて。

ひがついたままのたばこを、もっていた。



「しつけだ」



これは、しつけ、なんだって。

わるいこにはみんな、こうやってしつけするんだって。
だからだからおれがわるいこだとうさんはこうやってわざわざしつけるんだって。
いたいいたいすごくだってほかのひとにめいわくねえおれなにしたのおれはなにも。
いいやちがうおまえがわるいおれがわるいいおれがわるいこだからだめでわるいこ。

そっかおれがわるいんだ。
そうだぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶおれが、悪いの。


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