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もう、朝なのかな。
目を開けてみれば、床、向こうにやっぱりお酒の缶。

ずきずき、する。
いろいろなところが、ほっぺたもお腹も背中も足も頭も、ぜんぶいたい。
肩、のところは、特に、ひりひりする。

しつけって、痛い。
あ、痛くないと意味無いのか。
…もう、しつけ、されないように、良い子にしてなきゃ。


ルルルルル、


電話が鳴ってる。
取らなきゃ。


「……」


でも、ちょっと動いたら、じんじん、ひりひり。
動きたくない、動かなかったら動く時ほど痛くなかった。


ルルル。


電話が切れた。
もしかしたら父さんが、上で取ったのかもしれないけど。

父さん、まだ家にいるのかな。
足音とか、そんな音は上からは聞こえない。
安心出来ない、もしかしたらまだ寝てるのかもしれないし。

「…けほっ、」

少し起き上がるだけでも、ずきずき。
手当しないと、ほっぺが熱いからもしかしたら腫れてるかもしれない。
火傷も、早く冷やさないと。
寝てたから、もう意味無いかもしれないけど…。
壁にもたれながら、立つ。

ぎしぎし。
ずきずき。
足が痛い。

服脱ぐ所に確か、救急箱を置いてたと思う。
どういう風に手当ってすれば良いのかは知らないけど、それでもなんか出来ることはある、と思う、うん、多分。
戸を開けて、中に入る。


「…いぅ…っ!」


服を脱ごうとして、腕を上げようとして、びり、って痛くなる。
降ろしても、ずくずく、痛い。

でも、肩を冷やす為には、脱がなくちゃ、服まで、濡れるし…。
このままでもいいや。
そのまま服を脱がずにお風呂に入る。

シャワーを出してみたら、まだ水だった。
冷やすなら水だと思って、そのまま引っかかってるシャワーを取った。
その時に、また腕がずきずきした、けどそれを耐えて、肩に当てる。


「つめた!」


思っていたのより、ずっと水は冷たくて吃驚する。
ぬるい水にしようと思って、温度調節の奴をまわした。

少し経ってから、やっと水がぬるくなる。
それを肩にまたかけたら、今回はちょっとひんやりした水。

そのままかけてると、何と言うか、寒い。
まだ冬だし、このままじゃ風邪引くかな…。
それに火傷も、これくらい冷やせば大丈夫、だと思う。


ドン、って音がした気が、する。


…父さん、かな。
早く、お風呂から出て手当しよう。
父さんがお風呂使うなら、邪魔になる。

お風呂の中で濡れた服全部脱いで、その時にまた腕が痛かったけど我慢した。
タオルで体を頑張って拭いて、タンスの中から適当に服を取って、着て、ずきずきするのも我慢した。

痛いのが増えるのは嫌だ。
手当は自分の部屋でしよう。

歩くのは、結構大丈夫になってきたかもしれない。
痛いには痛いけど、朝より、多分マシになってきたと思う。

階段を上ろうとして、足が、思うように上がらなかった。
階段の横に、玄関はあって、見えた、靴が、無い。

父さんの靴がない。
ああ、いないんだ。
いない、此処にいない。

安心して足から力が抜けて、階段に座った。


「……ふ…っ、く、」


ほっとして、なみだがでてきた。
いたかった、いたい、いまも。
しつけ、それも凄く痛い。

たまに考える。
何で、俺、青い目なんだろう。
父さんと一緒の目なんだろう。



『いらねえよ』



知ってるよ、俺。
母さんが殴られてたのだって、本当は。

ほんとはとうさんはおれをなぐるつもりで、だけどかあさんはおれをまもってくれて、だからそうなっただけで。
おれがなにかわるいことをしちゃって、それでとうさんはおこるだけで。
かあさんはやさしくて、だからおれをまもってくれてただけで。


もしかしたらおれがいたから、かあさんは。


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